続出する“想定外の危機” 多様な対策で回避を 木之内農園代表 木之内均

木之内均氏

 近年、農業の収入保険制度ができたとはいえ、続発する“想定外の危機”が経営を脅かしている。温暖化による異常気象や台風、各種の伝染病などによる価格の暴落などはある程度覚悟はしてきたが、同じ自然災害でも私の農園を直撃した熊本地震や、東日本の津波、原発事故は各経営者にとって想定外の危機であったといっていいだろう。
 

法人経営にも影


 今回の新型コロナウイルスや働き方改革も間接的・直接的の危機と言ってよい。家族経営にも影響はあるだろうが、雇用を抱える法人経営にとってこのような外部的要因による危機は経営の維持に大きな影響を及ぼす。私も新規参入の経営から家族経営を経験し、現在は三つの農業法人の役員を務める立場として多様化する危機に対して、どのように対処するべきか課題は多い。

 35年の農業経験の中で、それなりに危機管理を考えてきた。そのきっかけは1991年に熊本をはじめ日本列島に大きな被害をもたらした台風19号である。85年に就農して以来さほど大きな自然災害を受けずにきた私にとって、この時のすさまじい暴風雨による地域農業への被害の大きさは、長年苦労して築いてきたものが一瞬にしてなくなるどころかマイナスになることを思い知らせた。幸い私自身の被害はさほど大きくなかったが、ひとごとではないと感じた。単一作物栽培、1拠点での営農のリスクを考え現在の経営スタイルを築いてきた。施設園芸でのイチゴとミニトマト、露地で水稲と種バレイショといった多品目栽培、6次化を進め農産加工場と観光農園の展開をすることで法人経営としての収入の安定とリスク回避をしてきた。
 

グループ化奏功


 しかし、4年ほど前の熊本地震で阿蘇の玄関口となる立野地区では大橋が崩落するなど大きな被害が出た。同地区にあった私の農場ではハウスも加工場も全て失った。震災時は一瞬これで終わりかと思ったが、多くのボランティアの方々をはじめ民間や行政、金融機関の支援などで何とか倒産は免れた。この時に大きな支えとなったのは船方農場と木之内農園が出資して設立した山口県の「花の海」と、親と同じことはやらないと言って独立し、40キロ離れた県境で繁殖牛の経営をしていた長男の牧場であった。

 花の海は震災後の従業員の一時避難場所となっただけでなく、後片付けに従業員を派遣してくれた。長男が畜産をやっていたおかげで、現在も農業用水が復旧していない私たちの地区の水田に転作の牧草を栽培することができた。経営の幅を広げグループ化して協力体制を敷く戦略は苦労も多く人材確保や「選択と集中」による利益率の向上からすると、たやすくできるものではない。だが、熊本地震の経験からすると正しかったと思う。

 大型化する農業法人は、企業並みの給与体系や福利厚生を目標にしながら人材を確保し、さらに、さまざまな危機管理を考え経営を継続させなければならない。そのためにも、これまで以上に多様な対策を考えなくてはならないと実感している。

 きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本・阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に『大地への夢』。
 

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