新基本計画の施策 現場主義で磨き上げよ

 食料安全保障の確立は、新たな食料・農業・農村基本計画が掲げる食料自給率目標の達成が基礎となる。進捗(しんちょく)を管理し、効果が高まるよう施策を磨くことが重要だ。一方、生産・消費の実態を無視した政策決定は農政不信を招く。計画の方向に沿って現場の声を反映させる必要がある。

 新基本計画は、生産農業所得や若い新規就農者、輸出額の増加を安倍政権の農政改革の成果として示した。具体的には農地中間管理機構や日本型直接支払制度の創設、輸出促進、米政策改革、農協改革などを挙げた。同政権の下で食料自給率は過去最低に低下したが、農政改革との関係には触れていない。

 生産基盤の弱体化が進み、自給率を引き上げられるかの瀬戸際である。施策の効果や課題の検証と、拡充や見直しに継続的に取り組まなければならない。そのために各年度の施策などを盛り込んだ工程表の策定と、10年後として設定した自給率目標や各品目の生産努力目標について中間目標の設定を求める。

 また、進捗管理と施策の検証は、食料・農業・農村政策審議会(農政審)で行うべきだ。新基本計画を取りまとめたことに加え、農業政策への国民の意見を聞く場だからだ。新基本計画も、施策の決定や推進過程で意見募集や各地での意見交換を行うとした。それらを農政審の論議に反映させることで透明性が確保され、自給率への国民の関心を高めることにつながる。情報発信などでの工夫も必要だ。

 消費者が国産を積極的に選ぶ機運を高めるために国民運動を展開することを評価したい。食育や地産地消などを官民協働で幅広く推進する。その際も、取り組みの改善へ意見をくみ上げることが重要だ。運動への参画意識の向上にもつながる。

 農政審から新基本計画の答申を受けた際、江藤拓農相が「(農業政策の)あらゆるものの上位に来る」と発言したことは極めて重い。規制改革推進会議など官邸の政策会議が提起した農政改革は、農政不信を招いた。生産現場の実態や、農政審や政府・与党などでの議論をないがしろにしてきたからだ。官邸の政策会議も、農業政策は基本計画に沿って検討すべきだ。

 同推進会議では依然、企業による農地取得の解禁を求める意見が根強い。企業の農業参入について新基本計画は現行のリース方式で促進するとした。政府は、食料・農業・農村基本法に基づいて決定した計画を軽視させてはならない。

 安倍晋三首相をトップとする官邸の会議が、農政改革の方向として随時策定する農林水産業・地域の活力創造プランと基本計画との関係も整理が必要だ。

 基本法は、おおむね5年ごとに基本計画を見直すとしているが、大きな情勢変化があった場合は機動的な対応も求められる。まず、日米貿易協定など大型自由貿易協定(メガFTA)の影響を注視する必要がある。
 

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