焼酎用サツマイモ 取引量減で産地困惑 青果・加工に急きょ転換 でんぷん仕向けも単価安

「高系14号」を植え付けした松田部会長のサツマイモ畑(宮崎県小林市で)

 近年の芋焼酎の需要低迷を受け、焼酎メーカーが原料用サツマイモの契約取引量を抑えたことで、産地が対応に苦慮している。特に今年は新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に、作付け直前に取引量を減らすと通達された例もあった。青果・加工用に品種を替えたJAでは、かさむ苗代や農地管理に頭を悩ませる。鹿児島県ではでんぷん用へ芋を回すが、取引単価が落ちるため、農家にとっては減収となる懸念が高まる。(三宅映未)

 宮崎県は、サツマイモ生産量に占める焼酎原料用の割合が7割と全国で最も高い。JAや農家が酒造メーカーと契約を結び、安定した取引を続けてきた。ただ、芋焼酎の消費の停滞を理由に契約量は年々減少している。

 JAこばやし甘藷(かんしょ)部会は、約90人が原料用サツマイモ「コガネセンガン」などを生産する。契約する焼酎メーカーからは昨年末までに契約量を減らすという連絡があった。それを踏まえ苗を準備していたが、今年4月、新型コロナによる消費減を理由にさらに1割減らすと通知された。JAは植え付け予定だった畑の1割で、青果・加工向け品種「高系14号」に切り替えることを急きょ決定。職員が部会員全戸を回り、理解を求めた。

 JA担当者は「県内では高系14号に切り替える産地が増え、苗の確保に苦労した」と明かす。さらに近年、南九州で発生している「サツマイモ基腐病」が苗の確保を難しくした。同病は茎や地中の芋が腐敗する病気。抑えるにはウイルスフリー苗を導入する必要がある。苗代は通常の2、3倍となり、生産者に負担がのしかかる。

 甘藷部会の部会長・松田繁利さん(67)はサツマイモが経営の柱だった。「高齢者でも管理の手間がかからず、栽培しやすい品目だったが、(契約量減で)続けるのも難しくなる」と打ち明ける。

 宮崎県同様、焼酎用の芋栽培が盛んな鹿児島県にも問題は波及している。JAそお鹿児島は大手メーカーから契約量減を知らされた。5月以降にも複数の焼酎メーカーから同様の申し出があった。既に植え付け済みだったため、JAは余剰分をでんぷん向けに仕向ける方針を固め、農家に説明した。

 県農産園芸課によると、焼酎原料用の主力品種「コガネセンガン」はでんぷん用原料にもできるが、農家の手取り額は補助金を加えても半分ほどに下がってしまう。焼酎用だと価格は1キロ平均50~60円だが、でんぷん用は10円弱。でんぷん用として出荷前に工場と契約を結ぶと、1キロ当たり27円の交付金が出るが、それでも減収は避けられない。焼酎用品種の取引額は、でんぷん専用種と比べ1俵(37・5キロ)当たり16円安いのも逆風だ。
 

減る需要 「苦渋の決断」


 焼酎の需要は2013年以降、減り続けている。国税庁によると18年度の単式蒸留焼酎の製造量は約44万キロリットルで、過去10年間で最低だった。

 焼酎製造で最大手の霧島酒造(宮崎県都城市)は20年分の取引量を減らす方針を、19年末にJAや仲買会社に伝えた。

 その後のコロナ禍で消費の先行きが不透明となり、同社は今年4月、追加で5%減らすことを決めた。同社は「4月は、他の作物への転換やでんぷん用への切り替えを検討できるぎりぎりの時期だった。農家のことを考えた上での苦渋の決断だった」と明かす。今後は取引先へ直接訪問し、事情の説明に回るという。

 薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)も前年より1割ほど取引量を減らすと決め、取引する農家などに説明している。
 

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