[災い転じて](下) 仙台牛「1頭買い」提案 売り場並ぶ希少部位
2020年10月29日

仙台牛を1頭買いしたスーパーでの即売会。女性客が手に取っていた(仙台市で)
仙台市若林区の会社員、佐沼俊輔さん(38)は9月下旬、「ザブトン」と呼ばれる牛肉を近所のスーパーで購入し、宮城県石巻市の実家を訪ねた。20代の頃、母と初めて口にし、そのおいしさにほれ込んだが、市中のスーパーや精肉店ではなかなか手に入らなかった。新型コロナウイルスの感染拡大で定期的な帰省がままならない中、大好物のザブトンで母と久しぶりに食事をすることを喜んでいた。……
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干し芋 うま~い アイデア 販売方法で“巣ごもり”消費者つかめ
サツマイモを蒸して乾燥させた干し芋が、新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要で売り上げを伸ばす。干し芋を手掛ける茨城や栃木の農家は、新たに接触を避ける消費者に向けて自動販売機を活用したり、筋トレ愛好者向けの独自商品を開発したりするなどして消費者の心をつかんでいる。(木村泰之)
自販機設置 売り上げ増 接触少ない買い物
飲み物と干し芋が買える自動販売機。黒澤さんが商品を整理していた(茨城県ひたちなか市で)
農水省によると、2019年産の茨城県の干し芋の生産量は3万2118トンで、全国の87%を占める。中でも400戸以上の干し芋農家がいるひたちなか市でサツマイモ「べにはるか」を約5ヘクタール作る黒澤太加志さん(43)は、国道245号沿いに1月から自動販売機で干し芋を売る。黒澤さんは「干し芋と飲み物が一緒に買える自動販売機は他にないだろう」と胸を張る。飲み物の缶やペットボトルの他、平干しと丸干しの2種類が選べる。透明なカップや箱に入った140グラム入りと170グラム入りが、1個650円で購入できる。
自販機を置いた国道沿いは、観光地の国営ひたち海浜公園に近い。黒澤さんは、店舗の営業時間外でも往来客が買うと見込んだ。赤と黒に塗られた目を引く自販機で売る干し芋は売り上げを伸ばし、観光客だけでなくコロナ禍で、人との接触を減らした買い物を望む客などが訪れる。3月中旬の時点で約90個売れて、1日に2回補充することもあった。
自販機設置を機に観光客が買うようになり、リピーターとなって通販でも購入したことで、20年は前年比1・5倍の3000万円を売り上げた。「茨城の人にとって干し芋は冬の食べ物。だが、全国では年中食べるものになってきた。以前は5月で加工を終えていたが、あまりの売れ行きに周年で加工したい」と話す。
筋トレの“相棒” 購買層絞り商品開発
購買層を限定した干し芋も生まれた。栃木県壬生町の約4ヘクタールで「べにはるか」を有機栽培する戸崎農園は、トレーニングをする人向けの干し芋「フィジーモ」を2月から販売する。農園の戸崎泰秀さん(46)は「干し芋フェアを開いた時、筋肉質な人が続々と買っていった。そんな人向けに売れるのでは」と企画の経緯を話す。干し芋は、糖の吸収が穏やかで血糖値の急上昇を抑えられるといわれる。
ダンベルを上げながら干し芋を口にする中川さん。「かみ応えがある干し芋はトレーニングに最高でもはや主食」と語る(栃木県壬生町で)
1袋50グラム入りを6袋1400円で販売する「フィジーモ」は、鍛えた肉体のバランスの美しさを競う競技のフィジークに由来する。購入した栃木市の中川博登さん(46)は「干し芋を筋トレの相棒にしてから便通が良くなり、100キロあった体重が78キロになった。糖質制限をしながら固形物が食べたいときに干し芋はぴったり」と勧める。
筋トレに励む人の声を踏まえたフィジーモは、かむ回数を増やそうと乾燥時間を長くした。カロリーコントロールや保存のしやすさを考え、チャック付きの小分け包装にした。
戸崎さんは、コロナ太りの解消でスイーツを自粛する層に受け入れられてきたとして、「20年は干し芋だけで年間2000万円を売り、昨年の2倍増だった。売り方を工夫すれば干し芋は挑戦しがいある品目だ」と力を込める。
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2021年04月08日

土浦ツェッペリンカレーDeluxe 茨城県土浦市
全国有数のレンコン産地、茨城県土浦市のレンコンと、県の銘柄豚「ローズポーク」を使ったカレー。土浦商工会議所が企画・販売する。
1929年にドイツの飛行船「ツェッペリン伯号」が世界一周の途中で降り立ったのが同市近郊の霞ケ浦海軍航空隊だった。当時、乗組員たちにカレーを振る舞ったという話を基に同市が2004年にカレーのまちづくりを始め、同会議所女性会が当時をイメージしてカレーを作った。同商品は09年から販売している。
1パック(220グラム)540円。問い合わせは同会議所、(電)029(822)0391。
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2021年04月14日

イチゴ輸出に勢い 2カ月で前年の8割 アジア圏中心
イチゴの輸出に勢いがある。財務省貿易統計によると2月のイチゴ輸出量が493トンとなり、単月では初めて10億円を突破。輸出量も、1月から2カ月連続で前例のない400トン超えとなった。日本産の品質面への評価に加え、新型コロナウイルス下の巣ごもり需要を海外でも獲得している。(高梨森香)
大粒・食味に定評 コロナ下の巣ごもり需要つかむ
日本産イチゴは香港、シンガポール、タイ、台湾、米国などに輸出。2014年から輸出量が伸び、18年には過去最高の1237トンを記録した。19年は不作で1000トンを割り込んだが、コロナ下で物流が停滞した20年も1179トンと18年に次ぐ輸出量を維持。10年と比べて11・5倍になったが、21年はその20年の年間量の8割に当たる913トンを2カ月間で輸出している。
日本産イチゴは海外市場では国内価格の3~6倍で流通するが、大粒の見た目や食味の良さから現地の富裕層を中心に人気が高い。福岡県のJA全農ふくれんの担当者は「コロナ下で輸送用の航空便が減便となる課題があった一方、訪日できない外国人の現地での家庭消費が旺盛だった」と指摘する。
イチゴは輸出の有力品目で、「今後、さらに需要は拡大する」(全農インターナショナル担当者)との見方は多い。越境のインターネット通販サイトを活用した輸出を進める主産地の栃木県は、シンガポールやマレーシアなどで県産イチゴを使った料理教室をコロナ下も開催。海外市場への売り込みを強める姿勢だ。
政府は農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略で25年にイチゴの輸出額86億円を目標に掲げ、全国12産地を「輸出産地」に指定。国内需要を満たした上で輸出向けも確保できるよう生産基盤の強化を急ぐ。農水省は「基盤強化を軸に、流通段階での品質保持、相手国の防除基準やニーズに合わせた生産で輸出量を伸ばしていく」(園芸作物課)と話す。
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2021年04月11日
省力樹形で事例集 果樹作業負担を軽減 農研機構
農研機構は、果樹の省力樹形の栽培事例集を作成した。国のプロジェクト研究の成果をまとめたもので、開発した自動走行車両や収穫ロボットも盛り込んだ。機械が導入しやすく、作業者の負担が少ない樹形を提案し、高齢化や人手不足への対応を目指す。同機構のホームページで公開している。
対象の品目は温州ミカン、中晩かん、リンゴ、日本梨、西洋梨、ブドウ、柿、オウトウ、桃、栗。……
2021年04月08日

ダイダイ地域の顔に 「サワー」PR実行委も発足 静岡県熱海市
ダイダイで熱海を元気に――。全国有数のダイダイ産地・静岡県熱海市では生産者と食品卸、飲食店などが一体となって、地域活性化とダイダイのブランド化に注力する。その一環として熱海市の飲食店関連団体は9日、「熱海だいだい実行委員会」を発足した。ダイダイの活用によって地域経済を循環させ、縮小するダイダイの生産基盤維持にもつなげたい考えだ。
委員会は熱海料飲連合会、熱海社交業組合、県飲食業生活衛生同業組合熱海支部の3団体が立ち上げた。……
2021年04月10日
新型コロナの新着記事
3都府県「まん延防止」 コロナ禍出口どこに
政府は9日、新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言に準じた対応が可能となる「まん延防止等重点措置」を東京、京都、沖縄の3都府県に適用することを決めた。対象区域の飲食店は、営業時間の午後8時までの短縮を求められる。影響を受ける外食産業や農家などの関係者からは、コロナの終息に向けた出口が全く見えない状況に「かなり厳しい」「これ以上は限界」といった声が相次いだ。
また時短、限界 消費しぼむ
外食
外食業界団体の日本フードサービス協会は「飲食店は『時短営業対応をいつまで繰り返すのか。いい加減にしてほしい』というのが本音だ」と明かす。感染防止対策でできることは既にやってきたが、これ以上は限界と受け止める。
時短の長期化で、銀行が追加融資を渋る事例が増えており、雇用調整助成金が当初予定の4月末で切れてしまえば、「飲食店が生き延びることはできない」と苦境を訴えた。
野菜仲卸
まん延防止等重点措置の東京都適用を受け、野菜の仲卸業者は「特に酒類を提供する飲食店からの注文は落ち込みが大きくなっている」と明かす。緊急事態宣言の解除後、注文は3割増と回復したが、「感染増加に伴い今週は再び落ち込んだ。大型連休の書き入れ時に重なるのは痛い」と漏らす。
卸売業者も「飲食店向けだった野菜が振り向け先に困り、葉物など足が早い商材は取引価格を大きく下げている」と話す。
酒造組合
度重なる飲食店への時短要請で、需要が大きく減る酒の業界は悲鳴を上げる。日本酒造組合中央会は「飲食店や旅行での消費が減り、酒造メーカーの経営はかなり厳しい。その状況が続く」と話す。高級日本酒を販売する東京都内の酒店は「昨年の春ごろは、自宅消費でインターネット販売が盛り上がったが、その勢いも収まった」と課題をみる。自宅向けの消費挽回に期待するものの、苦戦している状況だ。
作付けどうなる 策尽きた
生産者
東京都あきる野市の長屋太幹さん(39)は、約1ヘクタールでケールやリーキ、ビーツなどを生産し、都内のレストランに出荷している。時短営業の影響を受け、飲食店との昨年の取引額は例年の3分の1程度に落ち込んだという。
都がまん延防止等重点措置の対象となることを受けて「春から飲食店が復活することを期待して、頑張って作付けをしたが、なかなか厳しい」と声を落とす。
飲食店
買い物客がまばらな商店街(9日、那覇市で)
沖縄県では、今月1日から独自で飲食店への時短要請を実施している。JAおきなわの直売所で食材を毎日仕入れる糸満市の飲食店「味どころ田舎家」の高田見発店長は「要請が出た時点で店内での飲食自体を控える動きが増え、夜に加えて昼の客足も落ち込んでいる」と窮状を話す。昼は弁当販売に切り替えたが、1日20~30個ほどの売れ行きで、売り上げの減少をカバーできない。「できる限り経費を削減しているが、1年近く同じような状況が続き、もう手の打ちようがない」と語る。
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2021年04月10日
[新型コロナ] 「まん延防止」3府県に適用 生産者、外食、市場の声 回復の兆し暗転
政府は1日、新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言に準じた対応が可能となる「まん延防止等重点措置」を大阪、兵庫、宮城の3府県に初適用することを決めた。飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請する。対象地域の外食産業や農家などの関係者からは、感染が急拡大する状況に理解を示しながらも、消費や売り上げの減少に不安を訴える声が相次いだ。
酒の消費減退「心配」 兵庫県
全国一の酒造好適米生産量を誇る兵庫県。酒米生産者らでつくる県酒米振興会の村井喜彦事務局長は「緊急事態宣言時と同じような消費の冷え込みが予想される。感染防止のためには、仕方がないことだが、歓迎会シーズンに残念だ」とこぼす。県内では、 2021年産を減産する動きもあり、一層の酒米需要の減退を警戒する。
外食産業でも影響を心配する声が上がっている。JA全農兵庫の直営レストラン「神戸プレジール本店」(神戸市)では、3月1日の緊急事態宣言解除後、時短営業が午後9時までに緩和されたことで「目に見えて来客数が回復してきたところ」(営農企画部)という。
だが、重点措置では営業時間を午後8時まで短縮するよう求めており、「行政の指導には従う。ただ1時間の差は大きな影響が出る」(同)と懸念する。
牛肉「価格どうなる」 宮城県
宮城県登米市の「仙台牛」の繁殖・肥育農家、千葉啓克さん(31)は「まん延防止措置は仕方ないことだが、飲食店の営業時間が短くなるので、客足が遠のく可能性がある」と声を落とす。
JA全農みやぎによると、「仙台牛」になるA5等級の卸売価格は、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年4月は外食需要の減退により、前年比3割弱下落した。しかし、現在は回復基調にあった。
千葉さんは、まん延防止措置の適用で客足が遠のけば「単価が再び下がってくるのでは」と懸念する。
仙台市中央卸売市場の関係者は「飲食店向けの需要は一層厳しいものになりそうだ」と気をもむ。飲食店での需要が多い、つま物類やタケノコ、メロン「アールス」などが振るわないという。
コロナ禍以降、1年近くにわたり飲食店の低迷が続いていることから「閉店する飲食店も増えていると聞く。今後への影響が心配だ」と話す。
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2021年04月02日
緊急事態宣言解除も… 入国制限は継続 労力支援を延長 農水省
政府は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除後も、水際対策として外国人の入国制限を続ける。農業分野の技能実習生らも対象。期間は「当分の間」としており、生産現場の人手不足につながる可能性がある。農水省は対策として、代わりの人材を雇う際の労賃などに助成する「農業労働力確保緊急支援事業」の対象期間を6月末まで延長する。
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2021年03月20日

[新型コロナ] 4都県 緊急事態解除 再起へ慎重に始動
新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が、21日で解除される。首都圏では感染者数が下げ止まりし、引き続き飲食店の時間短縮要請は続くが、宣言の影響を受けた農業関係者の中には再起を懸けて、奮起する動きも出ている。(中村元則、小林千哲、丸草慶人)
客足、需要回復を期待 観光農園、花産地
千葉市緑区の観光イチゴ農園「エーアト・ベーレ」代表の田中幸男さん(64)は「これでお客が戻ってくることを期待したい。開園期間の5月まで頑張りたい」と話す。1月初旬から始まった緊急事態宣言の期間中、田中さんの農園は来園客が例年の半分に落ち込んだ。それでもJA千葉みらいの直売所などで販売するなどして、売り上げ減少やイチゴの廃棄を避けるよう努力してきた。
昨年はコロナ禍で来園客が減少する窮状を打破しようと、田中さんら千葉市の観光イチゴ農園11園が連携して団体「千葉市観光いちご園~ハッピーベリーガーデンズ」を発足。市の食のブランド「千」の認定を受けた。開園期間は残り約2カ月。田中さんは「仲間と協力して少しでも売り上げを回復させたい」と強調する。
埼玉県鴻巣市で卒業式や入学式の会場などを飾るサイネリアを生産する大山一郎さん(71)は、宣言の解除を「感染が再び拡大しないかという不安はあるが、商売をしている人は宣言が長く続くと参ってしまう。良いとも悪いともどちらとも言えない」と複雑な心情で受け止める。
サイネリアの需要は、緊急事態宣言下でも想定より落ち込まなかったという。大山さんは「式典での需要は減ったが、巣ごもり需要の増加で家庭向けは増えたのではないか」とみる。ただ「まだみんなウイルスにおびえている。宣言が解除されたからと言って、急に需要が増えることはないのではないか」と考えている。
同県深谷市で、チューリップを生産するJAふかや藤沢支店チューリップ部会部会長の嶋田典昭さん(65)は宣言解除を歓迎する。「これまでの家庭向け需要に加え、入学式などでの式典の需要が増えれば」と期待を寄せる。ただ一方で、感染状況などに関しては「不安な気持ちもある」という。
移住促進に弾み 自治体
“コロナ移住”が注目される中、移住促進に力を注ぐ地方の自治体からは「首都圏からの受け入れに弾みをつけたい」との声が上がる。ニーズはあるものの、これまで感染防止のためオンラインでの対応を強いられてきた。ただ、首都圏からの現地訪問の受け入れには懸念の声もあるため、慎重に対応していく考えだ。
長野県伊那市は2020年度、前年度を上回る9組が移住した。移住の相談やセミナーなどは対面からオンラインに切り替え、切れ目なく誘致を続けた。オンラインセミナーは33回開き、延べ1553人が参加。前年度と比べて回数は2倍、参加人数は5倍に増えた。
セミナーでは、移住希望者と地域の小学校をオンライン中継でつないだ。教諭らが登場し、恵まれた自然環境で子育てができることをPR。同市地域創造課の担当者は「オンラインは距離や時間の制約を受けにくいので、地元の人にも参加してもらいやすい」と利点を感じる。
ただ、土地柄や人間関係など現地を訪れないと分からないこともある。同市は「移住を決めるために欠かせない現地訪問ができるよう、十分な感染対策をしていきたい」と話す。
東京・有楽町で移住者の相談に応じるふるさと回帰支援センターでは、国内で感染が拡大した20年2~12月の移住イベントの開催数が、前年同時期(314回)の3分の1程度に減った。
緊急事態宣言が明けた6月以降は、感染予防のため窓口での相談を予約制に切り替えた。予約は常に埋まっており「本気度の高い相談が多く、移住ニーズが減った印象はない」(同センター事務局)という。
ただ、首都圏の新型コロナ感染者数は下げ止まっている。同センターの嵩和雄副事務局長は「現地での移住者の呼び込みを急に再開する自治体は少ない」とみる。
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2021年03月19日
[新型コロナ] 自粛疲れ じわり会食回帰 居酒屋やファミレス 2月売上高、客足増
酒類提供を伴う居酒屋やファミリーレストランなど大手外食の2月の売上高と客足が戻り始め、緊急事態宣言再発令に伴う消費者の自粛疲れによる会食回帰が進んでいる。政府は18日にも緊急事態宣言の全面解除の方針を示す見込みで、外食業界の経営環境は改善される。ただ、営業時間短縮は当面続き、売上高も前年同月比マイナスに沈んだままで、本格回復まで曲折が予想される。
居酒屋チェーンを傘下に持つ外食やファミレスなど上場30社が公表した2月の月次情報(15日現在)を日本農業新聞が分析したところ、19社で既存店の売上高と客足が前月より上昇した。うるう年だった前年同月より営業日が1日少ないにも関わらず、増加に転じ、緊急事態宣言が再発令された前月の落ち込みが底となったところが多い。
大半は売上高、客足とも前年同月比半減レベルにとどまるものの、国内外でカフェやレストランを展開する「グローバルダイニング」は2月の売上高が前年同月比22・8%増とプラスに転じた。来店客数は2%増だったが、客単価が20・3%増となり、売り上げを押し上げた。
緊急事態宣言継続中の売上高、客足の回復の背景にあるのが自粛疲れだ。「土、日の客足が伸びている。夕方早い時間から来店し、午後7時の酒類提供停止まで会食を楽しんでいる」(大手居酒屋チェーン)。逆に、個食が多い牛丼チェーンは売り上げ、客足が減っているところが多い。
外食業界に詳しい亜細亜大学の横川潤教授(経営学部)は「居酒屋やファミレスへの客の移動が起きているのではないか」と自粛疲れによる会食回帰の可能性を指摘する。
ただ、緊急事態宣言が解除された大阪府や愛知県などは時短が午後9時まで、1時間緩和されただけ。22日から解除見込みの1都3県も同様で、外食の急回復は望めない。2月の売上高、客足がさらに落ち込んだ企業も少なくない。
また、新型コロナウイルス対策の改正特別措置法の「まん延防止等重点措置」は、緊急事態宣言がなくても同様の規制が可能だ。「外食制限は当面変わらず、経営への打撃は続く」(同)との見方も根強い。
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2021年03月18日
情報発信の影響調査 コロナ下 購買行動探る 農水省有識者会合
農水省は17日、食料安全保障に関する施策を外部有識者と検討する「食料安全保障アドバイザリーボード」の第2回会合を開いた。食料の安定供給に関するサプライチェーン上の課題をテーマに設定。同省は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などを説明した上で、食料の供給状況に関する情報発信が消費者の購買行動に与えた影響を調査する方針を示した。
会合は非公開。同省によると、コロナ禍で生じた課題について、同省が説明した。……
2021年03月18日

[新型コロナ]ワクチン接種始まる 厚生連病院
新型コロナウイルスワクチンの医療従事者向け優先接種が、JA厚生連病院でも始まった。JA神奈川県厚生連相模原協同病院では8日、医療従事者ら約380人が1回目の接種を受けた。10日までの3日間で975人が接種する予定だ。
問診をしてから、肩上部に筋肉注射した。接種後15分は待機し、体調に異変がないことを確認。スムーズに進めば、1分以内に接種が終わる人もいた。接種した井關治和病院長は「全然痛くない。新型コロナウイルスは国難だ。感染の広がりを抑えるために接種に協力したい」と話した。
2回目は3週間後の29日から接種する予定。同病院では、ワクチンが希望した1400人分に足りず、追加の供給を要望している状況だ。
厚生労働省によると、高齢者への接種は4月12日から一部の市町村で始まる見通し。4月5日の週に住民の接種に向けてワクチン供給を始め、6月末まで高齢者約3600万人の2回接種分を配布する予定だ。
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2021年03月09日
[新型コロナ] 「食料安保に関心」6割 “国産派”も増 コロナで高まる 全中調査
新型コロナウイルス禍を経て、国民の約6割が食料安全保障に関心を持っていることがJA全中の調査で分かった。うち約7割は国産食品を積極的に買っていた。以前からそうした考えを持っていた人に加え、コロナ禍を機に考えが変わった人も一定数いて、国民の食料への意識が高まっていることが鮮明になった。
全中は食や農業、JAに関する世論を知るため2011年から毎年調査をしている。対象は全国の20~60代の男女2500人。20年11月の最新調査では、初めてコロナ禍について聞いた。
「以前に比べ、国内で食料を生産する大切さ(食料安全保障)に対する関心が高まったか」という問いでは、18・4%が「以前は関心を持っていなかったが、コロナ禍で関心を持つようになった」と答えた。「コロナ禍で、さらに関心が高まった」(19・6%)、「コロナ禍以前から引き続き関心は高い」(22・7%)と合わせ60・7%が食料安全保障に関心を持っていた。
食料安全保障に関心を持つ人の割合は、女性で特に高かった。年代別に見ると、以前から関心が高い人の割合は男女とも高い年代ほど上昇する傾向にあった。新たに関心を持ったり、高めたりした人の割合は年代に比例しなかった。
食料安全保障に関心を持つ人に対し「国産の食品を多く(外国産から切り替えて)買うようになったか」を聞いたところ、72・6%が国産食品を積極的に購入していた。
内訳は「コロナ禍以前から積極的に買っている」が37・5%で最多。「コロナ禍以前から買っているが、さらに買おうと思った」(22・1%)、「コロナ禍で関心を持ち積極的に買うようになった」(12・9%)と続いた。
全中は、食料安全保障への関心が高い割合で行動に結び付いていると指摘。「引き続き『国消国産』の重要性を発信し、食料安全保障の確立につながれば」(広報部)とする。
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2021年03月02日

コロナ下で地域医療守る北海道厚生連 全国から励まし700件 「皆様の勇気に感謝」「私たちのヒーロー」
各病院で新型コロナウイルスの感染者の治療に当たっているJA北海道厚生連に、感謝の手紙や農作物の寄付など700件を超える支援が全国から届いている。旭川厚生病院では全国最大規模の感染クラスターが発生するなど、感染拡大で先行きが見えず厳しい状況が続いていた。道厚生連の役職員は「“善意の輪”にどれだけ救われたか分からない」と感謝している。(尾原浩子)
職員の心救う
同厚生連は15カ所の病院・クリニックを経営し、特別養護老人ホームやデイサービスなど介護施設も運営。近くに薬局がない組合員や地域住民らのため配置薬業務も行う。地域に密着し農村に軸足を置く同厚生連に対して、全国のJAや組合員、患者、地域住民、関係団体、学校などからの励ましやねぎらいの言葉が書かれた寄せ書きや寄贈・寄付が届いた。
その数は全体で700件以上に上り「この街を支えてくれてありがとう」「みんなが元気になりますように」「感謝の気持ちでいっぱい」「いつも守ってくれてありがとう」といった言葉が多数添えられていた。特に医療従事者に対して「皆さんは私たちのヒーロー」「皆様の勇気に感謝」「いつも応援しています」と感謝の言葉をつづる手紙が多かった。中には手形を桜の木のように仕立てたものもあった。
心温まるメッセージが、時には家にも帰れず、涙を流しながら病院で働く医療従事者の励みになり、勇気につながったという。同厚生連では送られてきた手紙などは大切に保管している。
同厚生連の中瀬省会長は「温かいお言葉でどれほどの職員の心が救われたか分からない。日々励まされ、現在もなお対応に当たることができている」と感謝している。
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2021年03月02日
コロナ下販促支援 2次募集 7月末分まで対象に 農水省
農水省は、新型コロナウイルス禍で売り上げが2割以上落ち込んだ農産物の販売促進活動を支援する「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」の2次募集を行う。近く募集を始め、締め切りは4月上旬とする方針。4月中下旬から7月末までの取り組みを対象とする。
2020年度第3次補正予算で250億円を計上した事業だが、緊急事態宣言の再発令による影響なども踏まえ、21年度も支援することにした。……
2021年03月02日