乳幼児向けようかん発売 県産野菜ふんだんに 松山市の和菓子会社
2021年02月28日

新発売した乳幼児向け「おやおやようかん」(薄墨羊羹提供)
松山市の薄墨羊羹(ようかん)が県内産野菜をふんだんに使った乳幼児向けようかん「おやおやようかん」を発売した。「とまと」「かぼちゃ」「ほうれん草」「紫いも」「みかん」の5種類。もなか皮で作った食べられるスプーンや、かわいい動物を描いたパッケージも楽しいおやつの時間を演出する。県内直営店とオンラインで販売している。
江戸時代創業の同社がようかんの新市場開拓を目指し、県内異業種2社と連携で地域密着型ビジネス創出にチャレンジした。「安心安全、おいしい、おやつの時間が楽しくなる」をコンセプトに子どもが初めて食べる和菓子として開発した。
カップ入りの軟らかいようかんで、もち米で作った食べられる「もなかスプーン」で食べる。ようかんに使う白あんの主原料は、食物繊維やミネラルが豊富な北海道産の手亡豆。
野菜は県内契約農家が栽培する。うま味や栄養を凝縮し、舌触りが滑らかになるようパウダーやペースト状にして練り込んだ。砂糖は通常はようかんに使わない沖縄産のきび砂糖を使い、発達段階の子どもの舌にちょうど良い甘さに仕上げた。
直営店では1個(80グラム、スプーン付き)320円(税別)で販売。オンライン販売は6個セットが税別、2000円(野菜4種各1個、みかん2個、スプーン6個、送料別)。
江戸時代創業の同社がようかんの新市場開拓を目指し、県内異業種2社と連携で地域密着型ビジネス創出にチャレンジした。「安心安全、おいしい、おやつの時間が楽しくなる」をコンセプトに子どもが初めて食べる和菓子として開発した。
カップ入りの軟らかいようかんで、もち米で作った食べられる「もなかスプーン」で食べる。ようかんに使う白あんの主原料は、食物繊維やミネラルが豊富な北海道産の手亡豆。
野菜は県内契約農家が栽培する。うま味や栄養を凝縮し、舌触りが滑らかになるようパウダーやペースト状にして練り込んだ。砂糖は通常はようかんに使わない沖縄産のきび砂糖を使い、発達段階の子どもの舌にちょうど良い甘さに仕上げた。
直営店では1個(80グラム、スプーン付き)320円(税別)で販売。オンライン販売は6個セットが税別、2000円(野菜4種各1個、みかん2個、スプーン6個、送料別)。
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満蒙開拓と感染症 災禍の中教訓考えよう
国策で農業移民として旧満州(中国東北部)に送られ、多くの犠牲者を出した満蒙(まんもう)開拓団。テレビの取材を通し、ソ連侵攻後の避難先の大都市で18万人が飢えや寒さ、感染症で亡くなった事実に光が当たった。新型コロナウイルス禍の中、今につながる教訓を考えたい。
18万人は、満州最大の都市・奉天(現瀋陽)などの大都市で亡くなった。ソ連侵攻による満州での日本人死者は6万人で、その3倍に当たる。
日本農業新聞は、3月27日掲載の「都市で死者18万人なぜ 満蒙開拓団『見過ごされた事実』から迫る」で、番組を企画したディレクター矢島良彰さんの取材の内容や視点を紹介した。日本社会の今の問題につながると考えたからだ。番組は翌日、NHK―BS1「満州 難民感染都市」のタイトルで放送された。
記事掲載と番組放送の後に読者から声が寄せられた。その中から、今の問題との類似性への指摘に着目したい。
番組では、国に見放され命からがら避難した開拓団員が「避難先の奉天でぜいたくをしている」とデマを流された事実を紹介した。東日本大震災の被災地支援を続ける人は「真っ先に思い出したのは、東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難した人が『賠償金でぜいたくをしている』と誹謗(ひぼう)中傷された事実。お互い犠牲者なのに差別が起きてしまう構図がまったく同じだ」とみる。
難民収容所で発疹チフス、ペスト、コレラといった感染症が拡大、都市居留民は避難民を差別し、避難民には不信が募った。それが助け合いを阻む「見えない壁」となり、結果、居留民も感染者になった。新型コロナの感染者や医療従事者への差別と重なる。
こうした事実を矢島さんが知ったきっかけは、奉天で日本人居留民会が発行した難民救済事業要覧。大量死の直接の要因を「資金難による3カ月の救済遅れ」と記す。
「国民の命を守る」という責務を国が放棄した後、取り残され、苦難を強いられた人々。今に目を移せば、コロナ禍の中での解雇・雇い止めの拡大、貧困の深刻化、自殺者の増加……。国は責務を十分果たしていると言えるのか。国民は注視し、問題があれば声を上げなければならない。
矢島さんは日中両国の20人ほどから証言を得た。そこから、厳しい暮らしの中で現地の人が、日本人が帰国できるよう寄付を集めたり、孤児を育てたりするなど国を超えた助け合いの事実も分かった。
「さまざまな立場の人の話を突き合わせ、悲劇性だけに目を奪われないように」と矢島さん。今起こっていることを一人一人が冷静に、多角的に見る目を養おう。それが、助け合える社会につながる。
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2021年04月11日
農業遺産と里山システム 農村は可能性の宝箱 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏
地域伝統の持続可能な農業システムを評価する「日本農業遺産」に、今年新しく7地域が加わりました。これは国連食糧農業機関(FAO)による「世界農業遺産」の基準にのっとって国が定めているもので、世界および日本の「農業遺産」は、30地域に上ります。この農業遺産で最も特筆すべきは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)17目標の全てに貢献する点です。
そもそもSDGsが国連で提唱されるに至った背景には、世界的な科学者グループによる「プラネタリーバウンダリー(人間の活動が『地球の限界』を超えつつある)」という概念が元になっているのですが、そうした自然共生社会へ世界一丸となってかじを切る先駆けとしてFAOが提唱したのが「世界農業遺産」なのです。
日本初の世界農業遺産として2011年、石川・能登と新潟・佐渡を申請登録する道筋を作った専門家会議委員長で、公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長の武内和彦氏は、先日の認証式で、「自然資本の健全性はSDGs達成の基礎であり、国連では、家族農業の振興や生態系の回復(エコシステム)を掲げている」と講演しました。世界的な環境学者である武内委員長は、10年に開かれた第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)で、日本における自然共生型モデルを「SATOYAMA」として国際社会に広めたことでも知られています。
農業を持続可能なものにすることは、いま議論されている「みどりの食料システム戦略」のテーマです。
日本農業遺産や里地里山に注目が集まれば、伝統的な農業や美しい景観が評価され、農村にやる気が生まれ、経済や地域の活性化につながります。
ところで、今年認定された7地域のうち、特に時代を表していると感じたのは、兵庫県・南あわじの水稲・タマネギ・畜産システムと、宮崎県・田野清武地域の干し野菜システム(名称略)です。いずれも「耕畜連携」が環境や生産に貢献しているという評価で、これは国の畜産の未来を考える上でも希望となるものです。
農業遺産はどれも生産性、大規模、新技術の真逆にありますが、地域の個性が輝き、継承者が誇りを持っています。実はこれが一番の宝で、農泊、観光、商品開発、教育や人材育成につながっています。
プレーヤーが楽しそうに取り組む地域には、人を呼び込む力があります。まず農村に必要なのは、郷土への愛着や誇りではないでしょうか。循環型の里山ライフスタイルは、SDGsの根底に通じます。本当はどんなむらも、可能性の宝箱なのです。
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2021年04月13日

医師会と介護で連携 専門性生かし福祉強化 広島・JA三次
広島県のJA三次と一般社団法人三次地区医師会は8日、地域の高齢者福祉サービスの充実に向け、介護事業で連携協定を締結した。医療と介護でそれぞれの強みを生かし、人材交流や研修会の開催などで連携する。協定に先立ち5日から、同JAの通所介護施設に同医師会からリハビリテーション専門職を派遣。人材育成とサービス向上に役立てる。
JAと医師会が介護事業で連携するのは全国でも珍しく県内初。……
2021年04月09日
国土の将来像 食料の安定生産を柱に
2050年までの国土の将来像を検討する国土交通省の専門委員会が最終取りまとめの骨子案を示し、「真の豊かさを実感できる国土」を目標に掲げた。食料を安定供給できなければ豊かな国民生活は成り立たない。政府は地域の維持・振興を後押しし、食料の生産基盤を強化すべきだ。
骨子案は、同省の国土の長期展望専門委員会が提示。「真の豊かさ」の一つに「水・食料などの確保」を挙げた。委員から「カロリーベース食料自給率の問題の具体的なプロジェクトの積み上げ」(寺島実郎日本総合研究所会長)を求める意見もあり、食料安全保障の確立が国土形成の観点からも提起された。
カロリーベースの食料自給率は19年度が38%で、6割を海外に依存する。人口増加などで将来、世界的な食料需給の逼迫(ひっぱく)が懸念され、気候変動による自然災害のリスクも国内外で高まる。食料を国内で安定的に生産・供給し、自給率を引き上げ、国民の命と健康を支えることが「真の豊かさを実感できる国土」の基礎になる。
同委の最終取りまとめは、政府の国土政策の根幹となる国土形成計画の検討に反映される。国土の一部でもある農地を十分に活用し食料生産を維持・拡大することを、国民の共通課題として、農政だけでなく国土政策でも前面に打ち出すよう求める。農地を使う農業者はもちろん、保全に協力する地域住民がいなければ食料生産の継続は難しい。地域のコミュニティーの維持が食料安全保障に直結する。
農地を含む国土の管理に向け骨子案は「地域管理構想」という考え方を示した。人口減がさらに進んで農地や道路などの管理が行き届かず、地域や国全体に悪影響が出る事態を避けなければならない。そのため、まず地域住民自らが管理方法などを検討・策定し、その取り組みを支援する方向だ。地域に人がいてこそ成り立つ構想だ。農村の人口減を食い止め、新たに人を呼び込むことが欠かせない。
地域に住み続けられる環境を整え、移住の動きを生み出すために骨子案は「地域生活圏」の形成を提示した。10万人前後を目安とした圏域で、生活の利便性や経済環境の向上、人材確保を推進する。
しかし中山間地域などが外れる可能性がある。「小さな拠点」を通じて生活サービスを維持する方向を示したが、地域条件で政策支援に格差があってはならない。同地域の農家数、農地面積、農業産出額はいずれも全国の約4割を占め、食料生産にとって重要だ。集落機能が弱っている地域にこそ、てこ入れが求められる。住民や移住者にとって魅力ある環境をつくり、農山漁村の維持と食料生産の継続・拡大につなげる必要がある。
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2021年04月09日
改正種苗法施行 海外持ち出し制限 初公表 シャインなど1975品種 農水省
農水省は9日、品種登録した品種(登録品種)の海外流出防止を目的とする改正種苗法の施行に伴い、海外への持ち出しを制限する1975品種を公表した。1日の施行後、公表は初めて。ブドウ「シャインマスカット」や北海道の米「ゆめぴりか」など、いずれも同法施行前に品種登録済み・出願中だった品種で、届け出に基づいて「国内限定」の利用条件を追加した。
野上浩太郎農相は同日の閣議後記者会見で「税関とも情報共有し、わが国の強みである新品種の流出を防ぎ、地域農業の活性化につなげていきたい」と述べた。
1日に施行された改正種苗法は、品種登録の際に、栽培地域を国内や特定の都道府県に限定する利用条件を付けられるようにした。「国内限定」の第1弾の品種は、農研機構や42道府県が開発した米や果実が中心だ。同省によると、国や県など公的機関が開発した登録品種の9割が「国内限定」となった。
米では青森県の「青天の霹靂」や新潟県の「新之助」、果実では石川県のブドウ「ルビーロマン」や福岡県のイチゴ「あまおう」、愛媛県のかんきつ「紅まどんな」などが含まれる。今後、民間の種苗会社の品種も含めて、順次追加する。
条件に反して海外に持ち出した場合、個人なら10年以下の懲役や1000万円以下の罰金、法人なら3億円以下の罰金が科される。流通の差し止めや損害賠償といった民事上の措置も請求できる。
同省は、同法施行の経過措置として、施行前に品種登録済み・出願中だった品種も、「国内限定」などの利用条件を追加できるようにしていた。9月30日まで届け出を受け付ける。一方、今後、品種登録する品種は原則として「国内限定」とするよう開発者に促す。
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2021年04月10日
地域の新着記事

熊本地震から5年 復旧の歩みに隔たり 営農本格化 工事「足踏み」 南阿蘇村、山都町
14日と16日に、2度の震度7を記録した熊本地震から5年がたつ。土砂崩れや地割れで被災した農地は多くが復旧し、営農再開を果たした。熊本県南阿蘇村では土砂に埋もれた棚田を大区画に整備。一方で山都町では復旧が遅れ、あぜなどの工事の3割が未完了だ。生産者の中には自ら補修し営農を続けている人もいる。(岩瀬繁信)
南阿蘇村乙ケ瀬地区の棚田は、2016年4月16日の地震で、大規模な土砂崩れが起きた。水稲を栽培する藤原三男さん(73)は、「50年、耕した水田が一瞬でなくなった」と振り返る。
おいしい米ができるよう土づくりに力を入れ、若い頃は堆肥を牛の背中に載せて運んだ。10年前には山の湧き水を導く水路も整備したが、地震で土砂と一緒に崩落した。
個人で建てたライスセンターは、乾燥機8台のうち3台が駄目になった。「残りもメーカーが直せるか分からないほどめちゃくちゃだった。廃棄すると思ったら涙が出た」と話す。
米作りを「やめようか」と思ったが、幸い建物は無事だった。被害を免れた水田で田植えもできた。稲刈り後に必要になる調製施設は、壊れた部品を交換し、毎日少しずつ復旧作業を続け、収穫に間に合わせた。
16年秋、藤原さんら地区の住民は棚田復旧の協議を始めた。以前から区画整理が必要と話しており、災害を機に大区画化を進めると決めた。県や国、村の支援で26ヘクタールの工事を開始。以前は1枚数アールの水田もあったが、20~30アールに広がった。
藤原さんは「大きな機械も格段に入りやすくなった」と喜ぶ。20年に一部で田植えが始まり、21年は全面を植える。来年のことは分からないが、「元気なうちはこの土地で米を作り続ける」と藤原さんは決意する。
熊本県は、農家の営農再開率を21年3月末で100%とする。一方で農道や水路などの復旧工事は完了率が86%。地域差が大きく、16年6月に豪雨の被害が重なった山都町は69%にとどまる。
棚田が広がる山都町白糸地区は、工事完了率が56%。水稲を2・7ヘクタール作る岩崎邦夫さん(78)は、崩れたあぜや水路11カ所で工事を申請したが、完了はまだ2カ所だけだ。「先祖が守った土地を荒らすわけにはいかない」と話し、早期の工事完了を訴えている。
工事が進まない中、地区では多くの生産者が農地を自身で補修して営農を続ける。
山下徹さん(50)は、崩れたあぜの内側に簡易のあぜを設置し、採種用の米を作る。山都町は県の主食用米種子の半分以上を生産していて「作り続ける責任がある」と、山下さんは力を込める。
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2021年04月14日

無花粉ヒノキ「丹沢 森のミライ」デビュー 神奈川県が苗出荷
神奈川県は無花粉のヒノキを「丹沢 森のミライ」の愛称で、初めて出荷していくことを明らかにした。現在、県内で出荷される杉やヒノキは、全て花粉の飛散量が少ない品種。「丹沢 森のミライ」はこれらの品種の20%以下の飛散量だった。第1陣は152本用意し、今後の植樹のイベントでのPRに使う予定だ。
2012年に県の自然環境保全センターがヒノキ4074本から花粉の飛ばない可能性がある雄で、繁殖しない不稔性のヒノキ1本を見つけた。その後2年間調査し、花粉が飛散しないことを確認。19年5月から県山林種苗協同組合がさし木で育苗を始めた。苗木の土の付いた根の部分が筒状のコンテナで2年育てた苗を出荷できるようになった。
県は林業関係者などからの愛称を募り、136点から「丹沢 森のミライ」と決めた。黒岩祐治県知事は記者会見で「花粉症のない快適な未来を予感させる名前」などと選定の理由を語った。
無花粉ヒノキの価格は、2年生のコンテナ苗で1本300円前後。同等程度の規格で少花粉のヒノキより100円ほど高い。同組合に連絡すれば購入できる。県は27年度までに毎年40~50ヘクタールに15万本程度植える杉やヒノキの1割ほどを無花粉の品種にしていく予定だ。
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2021年04月14日
3都府県「まん延防止」 コロナ禍出口どこに
政府は9日、新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言に準じた対応が可能となる「まん延防止等重点措置」を東京、京都、沖縄の3都府県に適用することを決めた。対象区域の飲食店は、営業時間の午後8時までの短縮を求められる。影響を受ける外食産業や農家などの関係者からは、コロナの終息に向けた出口が全く見えない状況に「かなり厳しい」「これ以上は限界」といった声が相次いだ。
また時短、限界 消費しぼむ
外食
外食業界団体の日本フードサービス協会は「飲食店は『時短営業対応をいつまで繰り返すのか。いい加減にしてほしい』というのが本音だ」と明かす。感染防止対策でできることは既にやってきたが、これ以上は限界と受け止める。
時短の長期化で、銀行が追加融資を渋る事例が増えており、雇用調整助成金が当初予定の4月末で切れてしまえば、「飲食店が生き延びることはできない」と苦境を訴えた。
野菜仲卸
まん延防止等重点措置の東京都適用を受け、野菜の仲卸業者は「特に酒類を提供する飲食店からの注文は落ち込みが大きくなっている」と明かす。緊急事態宣言の解除後、注文は3割増と回復したが、「感染増加に伴い今週は再び落ち込んだ。大型連休の書き入れ時に重なるのは痛い」と漏らす。
卸売業者も「飲食店向けだった野菜が振り向け先に困り、葉物など足が早い商材は取引価格を大きく下げている」と話す。
酒造組合
度重なる飲食店への時短要請で、需要が大きく減る酒の業界は悲鳴を上げる。日本酒造組合中央会は「飲食店や旅行での消費が減り、酒造メーカーの経営はかなり厳しい。その状況が続く」と話す。高級日本酒を販売する東京都内の酒店は「昨年の春ごろは、自宅消費でインターネット販売が盛り上がったが、その勢いも収まった」と課題をみる。自宅向けの消費挽回に期待するものの、苦戦している状況だ。
作付けどうなる 策尽きた
生産者
東京都あきる野市の長屋太幹さん(39)は、約1ヘクタールでケールやリーキ、ビーツなどを生産し、都内のレストランに出荷している。時短営業の影響を受け、飲食店との昨年の取引額は例年の3分の1程度に落ち込んだという。
都がまん延防止等重点措置の対象となることを受けて「春から飲食店が復活することを期待して、頑張って作付けをしたが、なかなか厳しい」と声を落とす。
飲食店
買い物客がまばらな商店街(9日、那覇市で)
沖縄県では、今月1日から独自で飲食店への時短要請を実施している。JAおきなわの直売所で食材を毎日仕入れる糸満市の飲食店「味どころ田舎家」の高田見発店長は「要請が出た時点で店内での飲食自体を控える動きが増え、夜に加えて昼の客足も落ち込んでいる」と窮状を話す。昼は弁当販売に切り替えたが、1日20~30個ほどの売れ行きで、売り上げの減少をカバーできない。「できる限り経費を削減しているが、1年近く同じような状況が続き、もう手の打ちようがない」と語る。
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2021年04月10日

地域と移住者を橋渡し 各地で協力隊“卒業生”の組織設立
元・地域おこし協力隊員の組織化の動きが、各地で広がっている。地方への移住希望者と受け入れ側とのミスマッチ予防に活躍する。元隊員は、隊員の募集要項の見直しを助言し初の採用に貢献、また経験を生かして移住希望者の不安に寄り添うなどの活動を展開。政府が2024年度までに隊員数を8000人にする目標を掲げる中、“先輩移住者”として隊員の受け入れや定着を後押ししている。(丸草慶人)
「隊員」初採用導く 募集要項の見直しも
総務省によると元隊員らの組織数は、15年度の1団体から、20年度末までに19団体に増えている。隊員数が増える中、身近な相談窓口として同省は19年度、組織化を後押しする事業をスタート。都道府県単位の組織を設ける場合、150万円を上限に助成する。20年度までに10団体を採択。21年度も事業は継続する。
「自治体は隊員にあれもこれも多くを求めがち。隊員はスーパーマンではない」。佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク代表の門脇恵さん(35)はこう指摘する。佐賀県で19年11月、元隊員らが同ネットワークを設立した。20年度、4市町の募集要項や活動内容の見直しを手伝った。
門脇さんの助言で神埼市は、活動項目を7から1に絞り込んだ。「イベントの開催と誘致」に限定し、仕事内容をイメージしやすくした。このことで、隊員の募集開始から4年目で初の採用につなげることができた。同市初の隊員となった福岡県出身の吉富友梨奈さん(31)は「移住希望者にとって、活動内容の分かりやすさは重要。サポートが充実していて安心できた」と話す。
悩みに共感心ケア 相談窓口を担当
元隊員は、移住希望者の不安にしっかり寄り添えることも強みだ。19年度の移住者が1909人と過去最高を記録した愛媛県。移住相談窓口を「えひめ暮らしネットワーク」が担う。
ここでは8人の元隊員が松山市の事務所に常駐。移住希望者が現地を視察する場合、ネットワークの元隊員が現地隊員の同行を手配している。
元隊員の組織化によって、隊員や自治体の情報が集まりやすくなった。このことを生かし移住希望者に適した地域や活動内容を助言し、ミスマッチの防止を目指す。不定期で訪れる移住相談にも臨機に対応でき、着実な移住につなげている。代表の板垣義男さん(46)は「希望者の悩みに共感して、視察先のありのままを答えることができる」と胸を張る。
持続可能な地域社会総合研究所・藤山浩所長の話
地方回帰を進める上で、地域おこし協力隊は重要な存在だ。地域実態に合った活性化の戦略を練り上げるには、隊員としての経験と知見が頼りになる。元隊員らが組織化することで、ノウハウを共有して学び合える。地域の意見と移住者のやりたいことを調整して導くことができ、受け皿となることにも期待できる。
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2021年04月09日

[コロナが変えた日常] マスク越し、希望の香り
新型コロナウイルス禍でも前を向こう──。群馬県藤岡市にある農業高校、県立藤岡北高校で8日、同校フローラルライフコースの生徒の手による、花で彩られた入学式が行われた。式は保護者の数を制限し、マスク姿で開いた。
新入生120人は、カーネーションやトルコギキョウなど100本の切り花でアレンジしたアーチをくぐって体育館に入場した。ステージにも、生徒が種から育てたキンギョソウとペチュニアのプランター70鉢が並び、マスク越しでも分かる花の香りが新入生を包み込んだ。
花の装飾は、コロナ禍で行事がほとんどできなかった3年生を明るく送り出そうと、3月の卒業式から在校生が始め、今回の入学式でも取り入れた。
新入生代表として宣誓した秋山美智さん(15)は、花であふれた農業高校らしいステージを見上げ「花が大好き。見ただけで花の名前が言えるようになりたい」と期待に胸を膨らませていた。(染谷臨太郎)
コロナ禍による最初の緊急事態宣言から1年。未曽有の感染症が変えた食や農、暮らしの日常を写真で紹介する。
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2021年04月09日

巧みに牛をさばく「技」絶やさず継承 マイスター制度設立 兵庫県食肉卸事業協同組合
和牛の流通を陰で支える「食肉処理技術」の継承に、兵庫県の業界団体が乗りだした。県食肉卸事業協同組合は、枝肉を各部位に切り分けるこの技術で特に優れた“職人”を認定する「兵庫県牛肉マイスター」制度を設立。高齢化などで人材不足が全国的な課題となる中“職人技”を次代につなぐ中核的人材を育てる。組合によると、食肉処理技術者の認定制度を都道府県単位で設けるのは全国で初めて。(北坂公紀)
中核人材の確保・育成へ
牛肉は、大きく分けて3段階で切り分けられる。まず、卸売市場で枝肉に加工。その後、食肉卸などに販売され、食肉処理技術者がヒレやモモなどの各部位に切り分ける。最終的には薄切り肉やブロック肉に加工され、スーパーや飲食店で提供される。
組合によると、県内の食肉処理技術者の数は長らく減少傾向にあり、高齢化も進んでいる。中尾徳弘理事長は「食肉処理技術の継承が危ぶまれた。いくら農家が高品質な牛を育てても、牛肉が食卓に並ばなくなる恐れがあった」と振り返る。
そこで組合は2018年度、県内の食肉処理技術者を対象に同制度を創設した。マイスターを若手の指導に当たる中核的人材に位置付け、業界の技術の底上げにつなげたい考えだ。
認定を受けるには、技術と知識が必要となる。食肉産業に携わる人材を育成する全国食肉学校の実技・筆記試験や県が実施する「神戸ビーフ」「但馬牛」に関する筆記試験に合格する必要がある。
この他、指導方法を学ぶため、同学校の講師を招いた3日間の講習を受ける必要がある。実技指導を交えて枝肉のさばき方をどう教えると分かりやすいのかを学ぶ。
20年度までの3年間で計9人が認定された。今年3月に認定された食肉卸・エスフーズ(西宮市)の高島和也さん(34)は「どう教えたらうまく伝わるのかを学べた。後輩の指導に生かしたい」と意欲的だ。
組合は、マイスターが持つ技術の継承に向けた取り組みも進める。マイスターを講師に招いたセミナーを定期的に開き、県内の食肉処理技術者が“職人技”を学べる機会を設けている。
中尾理事長は「食肉処理技術者は和牛流通を支える“縁の下の力持ち”だ。これからも技術を継承していきたい」と語る。
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2021年04月07日

業務需要低迷 コロナ克服へ品目転換 価格安定リスクを分散
新型コロナウイルス禍が2年目に突入した2021年、産地で生産品目を転換する動きが出てきた。飲食店向けから契約栽培の家庭向け品目に切り替えたり、販路が期待できる季節物野菜を取り入れたりと工夫。相場変動の少ない品目でリスクを分散し、コロナ禍を乗り越えようと奮闘している。(鈴木薫子)
高級野菜→加工キャベツ、花→新ショウガ
岡山市の山下和磨さん(37)は、首都圏で高級野菜として定着したエンダイブの栽培を減らし、JA全農おかやまと契約栽培する加工用キャベツの面積を拡大した。21年産のエンダイブは前年比15アール減の10アールとし、周年出荷をやめた。
家庭向けのカット野菜となる加工用キャベツは、前年比10アール増の35アール。引き合いが強まり高単価が見込める5月中・下旬の出荷を計画する。
サラダなどに使うエンダイブは、これまで出荷の9割が首都圏の飲食店向けだった。高級野菜として販売は安定していたが、コロナ禍で飲食店需要が激減。一時は出荷制限がかかり、山下さんは3600株を廃棄した。20年産の販売単価は例年の半値以下で、今も回復が鈍い。
全農おかやまによると、主にスーパーにカット野菜として並ぶキャベツは、コロナ下でも家庭消費が好調で、大きな影響は受けていないという。生鮮品の端境期である5月の出荷を計画する山下さんは「契約取引は、全量を買い取ってもらえ、単価が安定している。栽培計画を立てやすい」と期待する。
グロリオサで全国1位の出荷量を誇る高知市。西森茂人さん(35)は、20年産(19年9月~20年8月)のグロリオサをハウス約40アールで栽培したが、21年産はその3分の1を新ショウガに転換した。加温栽培は5月中旬、無加温栽培は7月末に出荷する計画だ。
西森さんら33戸が所属するJA高知市三里園芸部花卉(かき)部会はグロリオサを15ヘクタールで栽培。業務用で全国に周年出荷するが、昨春からイベントの中止が相次ぎ、同部会の20年産の売り上げは前年比で3割落ちた。
「花だけでは生活が苦しい」。前年から収入が4割近く減った西森さんは新ショウガ栽培を決めた。「旬の新ショウガは需要が旺盛で相場が変動しにくい」(JA担当者)ことが決め手だった。花きと同じ施設を使え、管理の手間も少ない。
JAは、新ショウガやピーマン栽培が盛んで、共選共販で販路が確立されている。同部会は、JAのサポートも受けやすいとして、西森さんを含む5戸がピーマンや新ショウガ栽培を新規で導入した。栽培指導するJA担当者は「安定単価の品目の導入でリスク分散を検討してほしい」と提案する。
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2021年04月05日
認定農業者が地域を守る 連携システム発足 新潟県佐渡市
新潟県の佐渡市認定農業者連絡協議会畑野支部は、農業者間で連携する「絆」システムの発足を総会で決めた。昨年の総会で予備提起をして、1年間検討を重ねてきた。農業経営者の死亡、病気、事故、災害など不測の事態の発生に対応し、農業者が互いに次年度以降の経営をサポートするのが目的だ。営農を継続することで地域農業を守る。
同支部には認定農業者が84人いる。……
2021年04月05日

熊本県ブランド和牛「くまもとあか牛」 子牛価格 前年3割高 赤身人気追い風も 頭数減少で不足感
熊本県のブランド和牛「くまもとあか牛」のもと牛となる褐毛和種の子牛価格が高騰している。直近3月の取引価格は前年比3割高の1頭約77万円と、高値が続く黒毛和種とほぼ同水準だ。健康志向や赤身人気で需要が高まり、子牛に不足感が出ている。「販売はまだ伸ばす余地がある」(食肉卸)との声もあり、増頭に向けた対応が求められている。(斯波希)
和牛の一種の褐毛和種は、国内で2万3300頭(2020年2月現在)が飼養され、その7割を熊本県が占める。特に「くまもとあか牛」は、赤身と適度なさしが特徴。消費者の健康志向の高まりとともに人気を伸ばし「新規の問い合わせも多く、需要期には数が足りない状況」(流通業者)という。
需要が高まる一方、生産者や飼養頭数は減少傾向で、子牛に不足感が出ている。19年の繁殖農家戸数は820戸で、この10年で4割減少。繁殖牛頭数は同1割減の1万1059頭となった。
JA全農によると、熊本県内で取引される子牛価格は16、17年にかけても70、80万円台の高値となったが、18年以降は60万円前後で推移。その後、新型コロナウイルス下でも比較的枝肉の販売が堅調で、20年12月以降は、再び80万円近い高値が続いている。
3月の平均価格は1頭約77万円と前年比32%、同月の過去5年平均比でも21%高い。19年度の平均価格は黒毛和種を2割下回っていたが、21年3月は黒毛和種の価格(同79万3362円)に迫る水準となっている。
肥育牛の産地関係者は「80万円で導入した子牛は120万円前後で販売するのが採算ライン」と指摘。「ただ最終的な肉の販売価格が高くなり過ぎると、黒毛とのすみ分けが難しくなってしまう」と懸念する。
「くまもとあか牛」を扱う九州の食肉卸は「今後も赤身人気のトレンドは続く。頭数が減少傾向にあることに販売側も危機感を持っている」と話す。県は「引き続き、優良雌牛の導入を後押しする事業などを通じ、生産基盤を強化していく」(畜産課)としている。
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2021年04月03日

中古ノリ網 鳥獣対策でリサイクル 田畑への侵入防止に農家が活用 兵庫のJA直売所でヒット
漁業用の網がJA直売所でヒット──。兵庫県三田市にあるJA兵庫六甲の直売所「パスカルさんだ一番館」では、ノリの養殖に使う「ノリ網」が農家から人気を集めている。この網は漁業現場で使い古されて本来なら処分される中古品だ。農家からは、鳥獣害対策に使える低コストな資材として人気を集めている。JA直売所を舞台に農業界と漁業界が結び付いて、資源の有効利用に向けた好循環が生まれている。(北坂公紀)
同直売所では2016年、兵庫県漁業協同組合連合会(JF兵庫漁連)が直営の鮮魚店をオープン。一つの直売所のなかに“農協系”と“漁協系”が同居していることが特徴だ。
ノリ網を販売するのは、JF兵庫漁連だ。農家の利用が多いJA直売所内に出店する立地条件に着目した。廃棄せずに農業現場で有効活用できないかと考えて、中古のノリ網の販売に乗り出した。
ノリ網の網目は、およそ15センチ四方。田畑の周囲に張って、鹿やイノシシの侵入を防ぐことに使われる。直売所での販売に当たっては、塩分が残っていると鳥獣を引き寄せてしまうため、念入りに洗浄している他、破れた箇所の修繕も行っている。
価格は1枚(幅1・6メートル、長さ20メートル)720円と安価だ。野生鳥獣による農作物被害が増える秋ごろには、月40枚ほど売れるという。JF兵庫漁連で同直売所を担当する荒巻伸一さん(44)は「直売所が立地している地域は、農作物で鳥獣被害が多い。リピーターや問い合わせが相次ぐなど、ノリ網は農家から好評だ」と手応えを見せる。
JF兵庫漁連によると、兵庫県のノリの生産量は全国2位。瀬戸内海沿岸で生産が盛んだ。生産の鍵を握るのがノリ網で、種を付着させた網を海に設置してノリを育てる。ノリ網は平均2、3年で更新され、使い終わった網は廃棄されている。
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2021年04月03日